角砂糖を4つ




トレイに少年の紅茶と自分のコーヒー、それから砂糖を乗せてリビングルームに入った。
不安そうに部屋にかしこまっている少年の隣にこしかける。

「どうぞ。」

「いただきます。」

ひかえめな感じでそう言うと、少年は俺の持ってきた角砂糖のビンに手をのばした。
ビンの中から、角砂糖を4つほど出して紅茶に入れる。



ちょっと待て・・・この光景・・・どこかで。

俺の記憶の回路がいっせいに動き出した。
すぐに答えは見つかった。

そうだ、ナツメも砂糖たくさん入れていたっけ。

顔だけじゃなく、こんな所もソックリだなんて・・な。



「そんなに見ないでよ。」

目の前にいる友人は少し怒った顔で言った。

「だってさ、ナツメ、いつも言ってるけどそれ砂糖入れすぎじゃん?」

「甘いの好きなんだもん。しょうがないじゃん。」

これがいっぱしの男子大学生のセリフだろうか。


俺とナツメは講義を終えて学校近くの喫茶店に居た。
思いっきり紅茶党のナツメは9月入ってまだすぐの、暑さが残るこの季節でもホットティーを飲む。
一方の俺はアイスコーヒー。もちろんブラック。
俺たちはお茶をしながら、とりとめもない話をしていた所だった。
紅茶党なのは認めるとして、ナツメという俺の友人はかなりの甘党だった。
今も見ていると角砂糖を4つも入れているのだ。
いつものことだがそんな大量投入に俺はあきれていた。

「オマエさ、女じゃないんだからそんなに甘いもん飲むなよなー。」

「いーじゃん。個人の自由ですぅ。あーぁ、女の子だったらこんなこと言われなくてすむのになー。女になりてぇ。」

そんなセリフを吐かれて俺はドキリとした。
ああ、俺も何度ナツメが女だったらいいかと思ったよ。
ナツメが女だったらこの苦しみは減るのに。

どうしてナツメは男なんだろう。

どうして男のナツメをこんなに好きになっちまったんだろう。

こんな気持ち、伝えられるハズがないじゃないか。
もし言ってしまったら、俺は友達としてでも側にいれなくなってしまうだろう。

「僕が女だったらナオキの彼女になってあげるのになぁ」

そんなことを突然言われて俺は飲みかけだったアイスコーヒーを吹き出した。

「あっ!ナオキ汚い〜!ホラ、ちゃんと拭いて。」

「汚くて悪かったな。ナツメがそんなこと言うからだぞ?」

「あらら・・・もしかしてマジにとっちゃった?意外と純粋だなぁ、ナオキ君は。」

「このぉ!ふざけんなよ!」

俺はナツメの頭を殴るフリをしてみせた。

「あはは!ごめんってば」

あはは、じゃないよ。
全く・・・俺の気も知らないで。



まぁ結局この時からお互い意識しあってたっていうのは後から知るんだけどね。




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