「センパイのこと、すきです。」
言った。ついに言ってしまった。
僕はメールで真中センパイを自分の部屋に呼び出し、(ヒロ君にはどっかに行ってもらった)単刀直入に切り出した。
センパイは少し驚いた調子で、こっちを見た。
「やっぱり驚いてます?」
「ああ・・・。いきなりそんなこと言われたもんで驚いた。」
「男から告られるなんて、いい気しないですよね。」
「いや、そんなことないけど・・・。」
明らかにセンパイが戸惑っている様子が伺えた。
でもここで引いたら僕じゃない。
「僕、ずっと前からセンパイに憧れてて・・・。この間のことでセンパイと知り合うことが出来てどんどん好きになっちゃって。僕なんかのこと何とも思ってないってわかってます。せめて、このチョコレート受け取って下さい。」
僕はちょっと涙目になって下からセンパイの顔を覗き込んだ。
おそらく自分が一番かわいく見えるアングルで。
「俺も、君のことは可愛いと思っていたよ。」
落ちた!
やっぱり男って単純だ。
センパイは僕の髪を数回撫でると、ついばむように唇を重ねた。
何かすごい慣れてる、なんて思いながらも必死で唇にすがった。
やっぱりキスって好きだ。
薄く目をあけるとセンパイはこっちを見ていた。
なんて綺麗な、青い瞳なんだろう・・・。
「なんで俺のことそんなに見つめるの?」
「だって・・・。あまりにも綺麗だから。」
「キスするときは目を閉じなきゃだめだろう?」
そう言ってあてがわれた唇はさっきより熱くて。
ぬめるような感覚を咥内に感じて、舌を入れられていることに気付いた。
あ、この人キスがうまい・・・。
本当にとろけちゃいそうなくらい、気持ちいい。
そうして、僕はひとしきり幸せなキスに酔いしれた。
「あ、ヒロ君おかえりなさ〜い。」
告白から一時間後、部屋に戻ってきたヒロ君を僕は満面の笑みで迎えた。
理由は簡単。
だってウレシイから。
「よかったな。」
ヒロ君は、僕が結果報告をする前に言った。
僕の態度を見るだけで分かっちゃってるって訳ね。
「やっぱり分かる?」
「分かり安いからな、望は」
ヒロ君はそう言って少しため息をつくと、バスルームへと入っていってしまった。
ん?なんか怒ってる?
やっぱり部屋追い出したの根に持ってんのかな?
まぁいいや。
僕は今ある自分の幸せに手一杯で、ヒロ君のことなんか考えもしなかった。
そう、僕は浅はかな人間だから。
こんな事位で有頂天になってしまうんだ。
この恋が多くの欺瞞と嘘で創られたものだとしても。
誰かを傷つけていることに、気付かないふりをして。
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