HUSK
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HUSK
@殻、皮
A(ものの)無価値な外皮



僕は自分の顔が大嫌い。
もちろんね。自分が美形だってのは自覚してる。
自惚れなんかじゃないよ。
でも僕は、みんなが僕のことを好きだというたびに酷くしらけた気分になるんだ。
僕のどこが好きなのさ?ってね。

ぱっちりとした目?形のよい口?嫌になるほど白い肌?それともこのサラサラで色素の薄い髪の毛?
どれも僕にとっては無意味なものでしかない。
「美しさ」という鎧をまとっている僕の心の中には、誰も入って来れないのだから。
それとも、もしかしたら自分の中にいる臆病な存在が、誰にも入らせないようにしているのかもしれないけど。
とにかく誰も僕の中身を見てくれない。
まぁそれ以前に、僕にそれだけ形のある「中身」なんて存在するかどうかも疑わしい。
外面しか見ない人間を見下しながらも、そんな自分はもっと嫌いだから。

時々ふと思うことがある。
消えていなくなってしまいたいと。
自分は存在する価値のない人間だと。

そんな後ろ暗い思考を振り切るように、僕は人に恋をする。
その時だけ、胸が高鳴って、自分が生きている感じがするから。
人を想っていれば、寂しくないから。
それに恋ならば、こんな僕の相手をしてくれる人だっているかもしれないし?
そう、だから本当は。
こんなウルワシイお顔に生んでくれた両親に、感謝しなければいけないかもしれないね。













この時期に、男である僕がチョコレートを買うなんて結構恥ずかしいことだ。
一人で来るんじゃ恥ずかしいから、ルームメイトのヒロ君を誘ってこの地域では一番栄えているであろうショッピングセンターにやってきた。
最初連れ出そうとした時は、一瞬すごく嫌な顔をしたけれど結局無理矢理連れてきてしまった。
それでも絶対に嫌われることはないだろうなんて確信している僕は、彼にはずいぶん甘えている。
これでも一応ワガママを言ってるって自覚はあるんだから、大目に見てほしいな。

何はともあれ、2/13のチョコレート売り場は人だらけだ。
まぁこれだけ人がいるんだから、一人くらい男はまぎれこんでいてもわかんないよね。
っていうかみんな真剣な顔してチョコを選んでるから、僕たちのことなんか気にしてなさそうだし。
僕は周りのことを気にせずに、チョコレートを選ぶことに集中した。
あまりの混雑にヒロ君とはぐれてしまいそうだったから、手をぎゅって握った。

ヒロ君の手はあったかい。
心の温かい人間の手は、きっとあったかいんだって思う。


「早く選べよ」


「いーじゃん。ゆっくり選びたいの!どれがいいかなぁ?」


「勘弁してくれ。ただでさえ恥ずかしいんだ。」


「じゃあ選ぶのにもっと協力してよ!ヒロ君どれがいい?」


「え?おれっ?」


ヒロ君は自分のことを指さして言った。


「別にヒロ君に買うんじゃないよ!ヒロ君だったらどれが欲しいって聞いてんの!男の意見としてさ。」


「望だって男だろうが。」


「僕は味覚が女だもん。甘いもん大好きだし。やっぱさぁ、真中センパイ甘いの苦手かなぁ?」


「知らねぇよ。無難に有名どこの買っておけばいいんじゃね?」


「も〜、全然頼りになんない!」


これだから男ってヤツは・・・。ま、自分も男だけど。

結局、手ごろなチョレートを買って僕たちは寮に帰った。
あとは明日これを真中センパイに渡すだけだ。
惚れっぽい僕でも、今回の相手はかなりレベルが高いと思う。
やっぱりすべての恋が上手くいくわけではないから、今までも失恋してきた。
まぁその時はヒロ君に慰めてもらえばいっか。

その夜
告白する前日の人間とは思えない気楽さで、僕は眠りについた。






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