唯一 -ただ、ひとり-


01

あなたしか いらないって いつもそうおもってた。








ちょうど6月の 雨ばかり降っている時期だった。
俺はつきあっていた男に別れを告げていた。


「俺さ、他に好きなやつできたんだ。」

そういった瞬間、アイツは何を言われたのかわからないという顔で俺のことを見つめていた。
そんなことあるはずがない。
そう言いたそうな目だった。


「お前と付き合うの、結構楽しかったよ。ありがとな。」

「それ、本気でいってるのか?」

驚きをたたえていた彼の顔に、怒りの色が芽生えてきた。

「本気だよ。」

「男同士なんてこんなもんだろ。それにさ、恋愛なんて俺にとっては所詮暇つぶしでしかなかったんだよね」

俺のセリフは完璧に彼をうちのめした。

「オマエは・・・そんなふうにしか俺たちの関係を考えていなかったのか。
愛してるって、ずっと一緒にいようって言ったのは・・・・ウソだったのか?」

俺はその問いかけになにも返事ができなかった。
自分を偽ることで必死で、今にも決壊しそうな心が泣き叫んでいた。

「要・・・何とか言えよ。」

・・・・

「何、オマエそんなこと信じてたの?今までよほどお気楽な恋愛しかしてこなかったんだね。」

「俺が本気で愛したのはお前だけだ。」

そういわれて胸がナイフで刺されたかのような痛みを感じた。

(俺も、本気で愛してるよ)

今にも飛び出しそうな言葉を抑えて俺はこの別れ話を終結させた。

「俺は、そんな風にマジになってる啓太は嫌いだね。俺たちそんな関係じゃないだろ?」

啓太はきびすを返すと無言で部屋を出て行った。
俺たちが3年もの間愛し合った部屋を。
自分の気持ちに精一杯で、最後啓太がどんな顔をしていたかは覚えていない。
啓太が出て行ったドビラがしまるのがやけにスローモーションで見えた。

俺たちはこうして終わった。

俺はこの世で一番大切なものを失った。








あなたしか いらないって いつもそうおもってるよ。


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