一ヶ月
side Hiroki 03




「後藤、ちょっと来い。」


ちょうどお昼休みになった頃、担任が俺を呼んだ。
なんだか嫌な予感がしつつも思い腰を上げて廊下に出る。


「何すか?」


「お母さんが倒れて救急車で運ばれたそうだ。」


なぜだかこういう時の嫌や予感が的中するものだ。


「母、胃が弱いんですけど、もしかしてそれでですか?」


「ああ。先生は詳しいことはあんまり聞いてないが、そうみたいだ。命に関わる程の症状ではないらしいけど。このまま学校抜けていってもいいぞ?」


「分かりました。今から行きます。」


「ああ、お大事にと伝えておいてくれ。手続は先生がしておくから。」


「ありがとうございます。」





俺は内心学校フケれる、と思ってちょっとうれしかった。
正直学校はバスケ以外好きではない。
この担任のこともあまり好きではなかった。
若くて人気のある先生だったが、俺は基本的に自分のことを先生と呼ぶ教師は好かない。
昔夜遊びばっかりしてた頃に熱く説教されてからますます苦手だ。


母親の病気は間違いなくあの胃潰瘍が再発したのだろう。
優樹が帰ってきてからあれだけ神経使っていたのだから症状が現れて当然だ。
少し苦い気持ちを抱きながら俺は病院へと向かった。












病院の受付で母親が入った部屋を聞くと、エレベーターで向かった。
この私立病院は最近立て替えたばかりですごく綺麗な建物だった。
母親が倒れたにしては随分冷静な自分が不思議だった。
母親の居る部屋は5階の病棟の一番奥の部屋らしかった。
すれ違うナースに会釈をしながらその部屋を目指す。

部屋の入り口に母親のネームが貼られているのを確認した時、中からかすかに声が聞こえた。
すぐにわかる。優樹の声。


「・・・の話だよ。ちゃんと反省してる。」


「ええ・・・。なら、いいんだけれど。もう絶対に、あんなことは・・・ダメよ。」


続いて聞こえてきた母親の声。
2人が何の会話をしているのかが一目瞭然だった。


2人はそれっきり沈黙となった。
気まずい雰囲気が部屋の外にまで広がってきていた。
俺は意を決して部屋の中に入る。
ドアをスライドさせる手に妙に力が入ったのを感じた。


「母さん、大丈夫か?」


母親に声をかけながらも最初に目を合わせたのは優樹だった。
しかしすぐに瞳をそらされる。
分かってはいることだったけど、少し胸が痛んだ。


「浩樹、ごめんね。もう大丈夫。それほど酷くなかったし。」


「そーやって油断してっから再発すんだよ。せっかく優樹が夏休みだっつーのに入院してたらしょうがねーだろ。」


「そうね。家のこと、優樹と浩樹に頼むわね。」


「親父もだろ。」


「だってお父さんは仕事が忙しいもの。家事ぐらいやってよね。私が帰った時にちゃんと綺麗に掃除洗濯できてるか、楽しみにしてるから。」


「大丈夫だろ。兄貴はあっちで自炊してたんだから。・・・な?」


「まぁね。それはさっきも母さんに話したけどさ。浩樹だって手伝えよ。」


「俺部活で忙しいからな〜。」


「せめて洗濯ぐらいしろよ。」


「はいはい。」


ずっと、優樹には避けられてたから、こんな風に普通に会話するのが久しぶりに思えた。
明日からは母親のいない家になる。
そのことがどこかうれしかった。
父親がいない時は、優樹と2人きりの時間が持てる。
それは何て甘い誘惑なのだろう。
理性を保てる自信は・・・あまりない。




















優樹と2人きりになるチャンスはすぐにやってきた。
学校から帰ると優樹が台所で夕飯を作っている所だった。
台所から立ち込める、良い匂い。


「何作ってんの?」


「肉じゃが。」


「そんなん作れるの?」


「まぁな。あっちで日本食が恋しくなったら、自分が作るしかないだろう?」


「そっか。親父は?今日は仕事が長引きそうだったさっき連絡入った。終り次第母さんの所に顔出してから帰るって。」


「じゃあご飯は俺と兄貴だけ?」


「・・・ああ。」


優樹が変な間を作るから逆に意識してしまった。
この家に2人しかいないんだ、と思うと妙な気分になってしまう。


「もうすぐできるから、食器出しておいて。」


「あ・・うん。」


着々と出来上がる美味しそうな食事に食欲をそそられながらも、変に頭の違う所が興奮しているのを感じた。


優樹の料理はやっぱりおいしかった。
母親の作る味に近い。
さすが同じお袋の味を持つだけあると思った。

優樹と一緒の食事は楽しい。
一緒にいてすごく落ち着くし、安心する。
久しぶりの和やかな食事だ。
けれど途中からどうにも優樹の色っぽい仕草にばかり注目してしまって自分を必死で抑えていた。
例えば箸使いだったり、物を咀嚼する口元であったり。
何かを食べる姿というのは実にエロティックだと俺は思う。
怪しまれないぐらいに優樹を見て、歯がゆい感触を味わった。



その、俺のなけなしの理性が限界に達したのは食後のひと時。


ダイニングで洗い物をする優樹の後姿が、実にヤバかった。
お湯で流しているせいか、シンクからは湯気が立ち込めて妖艶さを増す。
俺はたまらなくなって立ち上がった。
優樹は俺の気配には気付かない。


背後から思いっきり抱きしめた。


細い優樹の身体がピクンと震える。
ドクドクと、心臓の音がするのは自分のか優樹のなのか・・・?


今この腕の中にいる存在が無性に愛しかった。


ほんの、2,3秒。時が止まる。
しかしすぐに優樹は俺の腕を振り払おうと拒む動きを見せた。


「何・・・するんだよ!離せ!」


「嫌だ」


わざと優樹の耳元に息を吹きかけるようにして言った。
すると、優樹が息を飲む音が聞こえた。


「嫌なのはこっちだ。離せったら離せよ!」


「我慢できねぇ。もう・・・2年も我慢してたんだ。優樹に触りたい。優樹を抱きしめたい。それから・・・。」


「・・・忘れろよ。僕は・・・ダメだ。お前をもう、受け入れてやれない。」


「嫌だ、忘れることなんかできねぇよ。」


俺は前に回した手で優樹の胸を触った。
ブラウスの上から小さな突起を探り当てて、摘む。
すぐに分かるんだ。優樹の感じる場所なんて。


「・・・アッ・・。」


「ここだよね?優樹胸触られるの好きだった。」


「や・・・め。」


俺はブラウスのボタンとボタンの隙間から指を入れ、あらためてそこを摘んだ。
中指と親指の腹でぐりぐりと刺激を加える。


「あっ!」


たまらない、といった感じで優樹が声を上げた。


「やめろ!も・・・。」


「嫌なら本気で逃げればいいだろ。結構感じてるでしょ?」


俺がそう挑発すると、優樹は渾身の力を振り絞って俺の腕から逃れた。
しかしすり抜けようとした優樹の腕を掴み、キッチンの床に押し倒す。


「逃げれる訳ないだろ。体格が違うんだから。」


「離せ・・よ。触るな!僕に触らないで!」


優樹は両手を目の前に当てて叫んだ。
その手の奥に涙が見える。
本気で嫌がっているのを感じた。
しかしここまで昂ぶってしまった自分を止める術はなかった。
むしろ、涙を流す優樹の姿に、俺は欲情した。


優樹のズボンのチャックを下ろし、トランクスの上から掴む。
何年も、触れたかった。優樹自身。
先ほどの乳首への刺激ですでに立ち上がったそれを、俺はためらいもなく口に含んだ。


「はぁ・・・ん!ヤダ!ヤダ!」


優樹は必死で抵抗しようとしたが、俺ががっしりと掴んでしまってびくとも動かない。


俺は自分の口の中で成長しているものを丹念にナメ上げた。
すでに苦い味が口の中に広がる。
溢れ出してきているのを感じていた。
喉の置くまでそれを包みこみ、頭を上下にスライドさせて口全体で擦る。
そのたびにそれがどんどん脈うつのがわかった。


「ああ・・・あ・・・・・・ひゃぁっ・・・はぁ・・・ん。ふ・・・っ・・・うううう!」


やたら艶かしくて色っぽい優樹の声にそれだけでイキそうになった。


「イイよ。イって。」


「んっんっんっん・・・あっ・・。」


必死になって射精を耐えている優樹が愛しくて、ウラにある一番感じやすいスポットに歯を立てた。









その時、玄関で物音を感じた。
キッチンの床で絡み合う2つの肢体が動きを止める。


鍵を開ける音。


俺は一瞬パニック状態になって含んでいたものから口を離して固まった。
すると力が抜けた瞬間に優樹が俺を跳ね除けた。
そして、そのまま乱れた衣服を整えると一目散に部屋を出て自分の客間へと行ってしまった。
残された俺はなんとか居住まいを正しながらキッチンのテーブルに座った。


「ただいま。」


何も知らない父の声。
どうにか怪しまれないように平静にしなければいけない。


「おかえり」


俺の声はかすかに震えていた。
突然の焦り。それに、中途半端に熱を持ってしまった身体が熱い。
俺はしばらくの間その場から立つ事ができなかった。









溢れ出してしまった感情。
俺は、一瞬でも優樹を傷つけることを望んでしまった。


もっと理性的に自分を抑えなければいけないってわかっているのに。







この想いを。


止めたい。止まらない。止めることなんてできない。


やっぱり欲しい。


お前を抱きたいよ、優樹。









俺は、どうしたらいい?





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