「遅せぇよ。」
ドアを開けるなり、上のほうから冷酷な視線が浴びせられた。
随分背の高い目の前の男は、僕を部屋に引き入れるなりドアを閉め、しっかりと鍵をかけた。
「そんなにしなくても、もう逃げないよ。」
僕はといえば、諦めたような顔でその行動を見ていた。
「あ?最近は痛めつけられるどころか気持ち良過ぎて喜んで来てるんだって?」
「・・・そんなわけないだろ。君に抱かれることが、どれだけ苦痛かわかってるのか?」
「何言ってんだ。アンタがどれだけ淫乱か、よくわかたよ。アンタは最悪な淫乱だけど、体だけは最高だな。」
男はフン、と鼻で笑うと、いやらしく僕の肩を抱いてベッドルームへと連れて行った。
ベッドルームに入ってベッドに腰掛けるまで、僕は何の違和感も感じなかった。
いつものように、何回もしつこく抱かれて、憎しみをぶつけられるだけだと思ってた。
彼が一旦部屋出た部屋の外から、再び戻るまでは・・・・・・。
「へぇ。なかなかのモンじゃねぇ?」
「カズト、いつもこんな美人とヤってんのかよ?くくっ。怯えた顔もそそるじゃねぇか。」
一番に部屋に入ってきたのは、和人君ではなかった。白人の男が2人と、黒人の男が1人。その後に続いて和人君がニヤニヤしながら入ってきた。
「な・・・に?誰・・・コイツら。何のマネだよ。」
「ホラ、な。すげぇ良さそうなヤツだろ?ケツの締まりはもっとサイコーだぜ?」
何を言ってるんだ?この男は?
僕は全くもってこの状況が理解できなかった。
ベッドに、投げ出されたままの、ひ弱な僕と。
周りを取り囲む見知らぬ3人の男。そして僕を憎む1人の男。
「うわっやべ。なんかもう勃ってきた。」
男の1人が言う。
「ははっ。早えぇよ。さっきも言ったとおり、俺が最初だからな。」
「和人君・・・何なんだよ?コレは。コイツらにヤらせるの?」
「察しがいいじゃん。優樹兄ちゃん俺だけじゃ物足りなそうだからさ、サービスだよ。思う存分食らうんだな。」
「イヤだ・・・。やめろ!」
僕はかぶりを振りながら必死になって後ずさった。逃げられるはずはないと分かっていながらも、身体は逃げようとすることを止められない。
「もう逃げないってさっき言ってたじゃない。今更逃げるんじゃねぇよ!」
頬を思い切り引っぱたかれた。予想外の衝撃に、目がチカチカとする。視界がぶれてそのままベッドに倒れた。
倒れた僕に、すぐに和人君が覆い被さる。いつものように施される愛撫にも、恐ろしさから震えることでしか応えられない。
男達は4人で協力して僕の服を剥ぎ取った。それはとても造作のない作業だった。
「ひっ・・・。」
あっという間に全裸に剥かれてしまった僕に、部屋の電気以上に明るいライトが当てられる。あまりの眩しさに目を閉じた。
いや、これから起こる事を見ていたくなくて目を閉じたのかもしれない。
部屋には異常な熱気がこもり始めていた。何本もの手により、口により、体中を撫でまわされる。
目を閉じていると、その感覚がさらに鋭くなるような気がして、再び目を開けた。
目を開けた僕の目前にあったのは、ビデオカメラだった。僕の上には和人君がまたがり、他2人の男が僕の身体を触っている。そして、残った1人がビデオカメラを回し、この痴態を写していた。
「な・・・に。やめて!いやぁっ!」
僕の抵抗も空しいものだ。連れてきた男達は和人君の知り合いということからも、スポーツ関係なのだろう。彼らのどれもが屈強な感じで、例え人数が1人だったとしてもとても逃げられそうになかった。
「ちゃんと写しておいてくれよ。コイツの淫乱っぷりをさ。」
和人君は、いつも使っているローションをサイドテーブルから取り出した。
それはちょっとした催淫効果のあるもので。
いつものようにローションを窪みに垂らされ指で奥に入れられると、反応することを止められなかった。
「アっ・・・。う・・・ふっ・・。んん!」
「ホラ、下のお口に入れられるのが大好きなんだぜ?すぐ勃ってきた。」
心が拒否しても、身体は言うことを聞かない。男に抱かれることに慣らされた僕の身体は、そこで受ける刺激への耐性は弱く、催淫効果のあるローションがそれに拍車をかけていた。
意志にさからって、頭をもたげ始めた僕の中心は、すでに先っぽからとろとろと液体を滲ませる。
「なぁ、カズト。もうガマンできねぇよ。早くしろよな。」
「ああ、わかったよ。しょうがねーな。そんじゃあ口に突っ込めよ。」
「へへっ。あくまでも俺たちは後まわしってワケか。まぁいいや。兄ちゃん、気持ちよくさせてくれよな。」
僕の身体を撫で回していた男の1人が、自分のジーパンのチャックを開けると、すでに天井を向いているそれを取り出した。
口先に突き出されるものの、どうしてもそれを咥える気にはならなくて顔を背けた。
「カズト。俺の拒否られちまったんだけど。」
男が笑いながら言った。なんて、いやらしい笑い方なんだと、心の中で思った。
「オイアンタ、俺に逆らえねぇ立場なんじゃねぇの?可哀相だからアンタのお得意のフェラしてやれよ。」
僕の奥を指で弄っていた和人君は、もう片方の開いているほうの手で僕の腹をなぐる。
「ぐっ・・・。」
「何、そんな風に手荒に扱ってもいいんだ?それじゃあ容赦しねぇわ。ホラ、口あけろよ。」
男は僕の髪の毛を掴み、片方の手で無理矢理口を開けさせた。そしてほんのわずか開いた口にいきり立つモノを突っ込む。体格の分、大きいそれは僕の口中を満たした。
髪の毛を掴みながら腰をガクガクと突き出し、口の中を侵す。僕は屈辱的な気分になりながらも舌を絡ませた。
「ああっ・・・すげぇ。ヤバイ淫乱なんじゃねぇか?コイツ。超気持ちイイんだけど。」
「フン」
和人君は馬鹿にしたように笑って、僕の足を広げた。何時の間に三本にも増えていた指を抜くと、さらに大きいものを挿入した。
「ぐっううう・・・・。ふっ・・・」
口を塞がれながらも声が漏れる。ただ、口を塞がれているせいで自分の嬌声を聞かなくてもよくなったと、ホっとした。
「くっ・・・やっぱりイイな。あんたの中。」
和人君は気持ちよさそうに腰を進める。下から突かれるのと、上から突かれるのが交じりあって、何が何だかわからなくなった。
もう1人の男は自分のものを擦りながら、片方の手で僕の立ち上がったモノを握った。
薬と、体中で受ける刺激とで頭を朦朧とさせながら、必死に耐えた。
どの順番でイったのか、正しくは覚えていない。
口の中にいた男が喉の奥に目掛けて熱いものを放ったと、時を同じくしてもう1人の男が登りつめ、僕の顔に生暖かい液体をかけた。
たぶん僕がイったのは和人君と同時だったと思う。
「くっ・・・あああ・・・イク!イク!」
ガシガシと一際激しく突かれて、身体の奥に熱いものを感じた瞬間、僕も自分の腹に精を放った。
僕の中に放ったはずの男のそれが、再び息を吹き返しているのを見たのが、覚えている最後だった。
それからは入れ替わり立ち代り挿れられたということぐらいしか覚えていない。
すでに意識はなく、穿たれている感覚がそれを知らせた。
誰が入れているとか、何回目だとか、そんなことは全然わからなかった。
解放されたのは、いつだったのか。
時間の感覚を失った僕にそれを知る術はなかった。
目を覚ますと、すえた精液の匂いが鼻についた。
いつも以上に酷使したせいで、身体中が痛い。
すでに他の男達の気配はなく、窓の外を見つめる和人君の姿だけがあった。
しなやかで頑丈な肉体に、シャツを一枚だけ羽織って、外を見つめる。
夜は明け始めていて、すでに差し込み始めた光が彼の表情を映し出した。
さっきまでの、憎しみに満ちた狂った表情はそこには存在しない。
ただ悲しみをたたえた瞳が、うつろに存在するだけだった。
こんなに大きい身体をしているのに、今日は一段と小さく見える。
和人君は深いため息をつくと、僕の方に向きなおした。
僕が起きているのを見て、表情を作り直した。
「なんだ、起きたのか。」
「ああ。」
起きてから初めて出した僕の声は、みっともないほどに掠れていた。
彼は、僕が寝そべるベッドに腰をおろした。
「どうだった?たまには大人数で楽しむのもイイだろ?」
からかうように言う。
「そんなわけない・・・。もうこれっきりにして欲しい。」
「それはどうだろうな?アイツら優樹兄ちゃんの体、だいぶ気に入ってたみたいだし。」
「冗談はやめてくれ・・・。なぁ、僕は一体いつまで君のオモチャにならなきゃいけないんだ?」
「オモチャ?あんたオモチャなんかじゃねぇよ。俺はアンタを抱いて遊んでるわけじゃねぇんだ。・・・ただ、この怒りを発散したいだけだ。」
そう言った和人君は苦しそうに顔をゆがめた。
そして、変な沈黙が僕達をつつんだ。
「アンタ、浩樹のこと、まだ好きなんだな。」
ふと、そんな言葉が聞こえた。一気に心拍数が上がる。
認めたくない。でも否定しても、これだけ必死に彼を守ろうとしているのだから、僕の気持ちは一目瞭然だろう。
「アイツが他の女とデキてて、子供まで作ったなんて聞いて、平気なのかよ?」
鋭いナイフが突きつけられているみたいだった。
今は遠く離れた場所にいるから実感がないが、実際にその光景を目の当たりにしたらどんな気分になるだろうか?
僕が欲しくて欲しくてたまらなかったもの。それを手にしている女性がいる。
その、変わりに自分はボロボロだ。
「そろそろ潮時かもな・・・。」
その科白は僕にとって嬉しいはずのものなのに、なぜだか胸騒ぎがした。
「俺の最初の目的は浩樹を傷つけることだった。それが、アンタを抱いてると怒りで狂いそうになる。優樹兄ちゃんを苦しめている直接的原因は俺なのに、浩樹がそれを犠牲にして今でものうのうと生きていることが信じられない。俺は、アンタが可哀相なんだよ・・・。こんな、ザーメンまみれになって。」
なんて矛盾した感情なんだろうと思った。けれど、人は誰しも矛盾で構築されているのかもしれない。心の中に相反する様々な感情を押し込めて、それでも生きて。
和人君は一度立ち上がり、部屋の外へ出ると何かを持って再びやって来た。
近くまで来て、それが温かいタオルだということに気付く。
あろうことか、彼はそれで僕の体中についた汚れをふき取ってくれた。
優しくて、でも、哀しいその手で。
「ごめんな。もう、終りにするから。」
それが、何についての"ごめん"なのかは分からなかった。
ただ、僕を見る和人君の目が悲しみに濡れているのを見て、お人よしの僕は彼を抱き寄せた。
自分を苦しめている相手だとは分かっていたけれど、目の前で泣き崩れる彼を見て、何もせずにはいられなかった。
このまま静かに、彼の憎しみが熱を失えばいいと、願いながら。
僕は彼が泣き止むまで背中を撫でつづけた。
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