10(あらすじ)




優樹は呼び出された和人の部屋へ向かった。
そこでは和人以外にも複数の男が待ち受けていて、優樹はビデオに写されながら輪姦された。
しかしすべてが終わった後に見たのは悲しみにくれる和人君の顔で・・・。(以下本文)










目を覚ますと、すえた精液の匂いが鼻についた。
いつも以上に酷使したせいで、身体中が痛い。
すでに他の男達の気配はなく、窓の外を見つめる和人君の姿だけがあった。
しなやかで頑丈な肉体に、シャツを一枚だけ羽織って、外を見つめる。
夜は明け始めていて、すでに差し込み始めた光が彼の表情を映し出した。
さっきまでの、憎しみに満ちた狂った表情はそこには存在しない。
ただ悲しみをたたえた瞳が、うつろに存在するだけだった。
こんなに大きい身体をしているのに、今日は一段と小さく見える。
和人君は深いため息をつくと、僕の方に向きなおした。
僕が起きているのを見て、表情を作り直した。


「なんだ、起きたのか。」


「ああ。」


起きてから初めて出した僕の声は、みっともないほどに掠れていた。


彼は、僕が寝そべるベッドに腰をおろした。


「どうだった?たまには大人数で楽しむのもイイだろ?」


からかうように言う。


「そんなわけない・・・。もうこれっきりにして欲しい。」


「それはどうだろうな?アイツら優樹兄ちゃんの体、だいぶ気に入ってたみたいだし。」


「冗談はやめてくれ・・・。なぁ、僕は一体いつまで君のオモチャにならなきゃいけないんだ?」


「オモチャ?あんたオモチャなんかじゃねぇよ。俺はアンタを抱いて遊んでるわけじゃねぇんだ。・・・ただ、この怒りを発散したいだけだ。」


そう言った和人君は苦しそうに顔をゆがめた。
そして、変な沈黙が僕達をつつんだ。




「アンタ、浩樹のこと、まだ好きなんだな。」


ふと、そんな言葉が聞こえた。一気に心拍数が上がる。
認めたくない。でも否定しても、これだけ必死に彼を守ろうとしているのだから、僕の気持ちは一目瞭然だろう。


「アイツが他の女とデキてて、子供まで作ったなんて聞いて、平気なのかよ?」


鋭いナイフが突きつけられているみたいだった。
今は遠く離れた場所にいるから実感がないが、実際にその光景を目の当たりにしたらどんな気分になるだろうか?
僕が欲しくて欲しくてたまらなかったもの。それを手にしている女性がいる。
その、変わりに自分はボロボロだ。


「そろそろ潮時かもな・・・。」


その科白は僕にとって嬉しいはずのものなのに、なぜだか胸騒ぎがした。


「俺の最初の目的は浩樹を傷つけることだった。それが、アンタを抱いてると怒りで狂いそうになる。優樹兄ちゃんを苦しめている直接的原因は俺なのに、浩樹がそれを犠牲にして今でものうのうと生きていることが信じられない。俺は、アンタが可哀相なんだよ・・・。こんな、ザーメンまみれになって。」


なんて矛盾した感情なんだろうと思った。けれど、人は誰しも矛盾で構築されているのかもしれない。心の中に相反する様々な感情を押し込めて、それでも生きて。
和人君は一度立ち上がり、部屋の外へ出ると何かを持って再びやって来た。
近くまで来て、それが温かいタオルだということに気付く。
あろうことか、彼はそれで僕の体中についた汚れをふき取ってくれた。
優しくて、でも、哀しいその手で。


「ごめんな。もう、終りにするから。」


それが、何についての"ごめん"なのかは分からなかった。
ただ、僕を見る和人君の目が悲しみに濡れているのを見て、お人よしの僕は彼を抱き寄せた。
自分を苦しめている相手だとは分かっていたけれど、目の前で泣き崩れる彼を見て、何もせずにはいられなかった。




このまま静かに、彼の憎しみが熱を失えばいいと、願いながら。
僕は彼が泣き止むまで背中を撫でつづけた。




・・・という内容の第10話でした。第11話更新しました。




         









2005/4/26












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