<19>







「ずっと、一緒にいて。離さないで。」















あのとき、何故あんな言葉が出たのだろう。
僕たちはお互いを愛してはいけない存在なのだ。ましてや一緒にいることなど許されない。
僕たちは血がつながった兄弟で、それぞれを取り巻く環境がある。
わかっていた、ハズ、なのに。

何も考えずにただ感情に身をまかせて出た言葉。
あの時は熱で朦朧としていたから、夢だとでも思ったのだろうか。
夢なら何を言ってもいいと、そんな馬鹿なこと。
結局、消せなかった想いを伝えることになってしまった。
もう嘘はつけない。






そうして、いま、僕は浩樹の傍に居る。













僕の体力が回復するのを待って、話は切り出された。


「一緒に、日本へ帰ろう。」


そう言われるんじゃないかと思ってた。
入院中、浩樹はずっと傍にいてくれた。
その様子から見ても僕を離すつもりはなさそうだった。
今までの僕だったらそんあ要求は突っぱねていたに違いない。
しかしその時はとても疲れていたし、浩樹が傍にいることの居心地の良さを再認識してしまったから、すぐに拒否することができなかった。
浩樹から離れて初めて、迷いが生じたのだ。


「家族は・・・どうするんだ。晶子ちゃんと・・・それに、子供もいるんだろ?」


今の僕たちにとって兄弟の禁忌と同じくらいに重い話題。それは浩樹にはすでに守るべき家庭があるということ。
一瞬、重い沈黙が流れた。


「俺のいちばんは、何かってこと、優樹ならわかってんだろ?」


浩樹のいちばん、それはたぶん自惚れなんかじゃないだろう。


「僕に、浩樹の家族を捨てさせるつもり?今ある家族だけじゃない。僕らがそんなことになったら、父さんも母さんも 失うかもしれないんだぞ?」


何年前かに最後に見た、少しやつれた母さんの顔を思い浮かべた。
あれだけ苦労させて、勝手に目の前から消えて、さらに今ではたったひとりの息子まで奪おうとしているのか。


「優樹が罪を背負う必要はない。優樹は俺を買い被りすぎだ。俺はおまえ以外の人間に対してはどこまでも酷いこと、できるぜ?平気で親友の女寝盗るぐらいなんだ。最悪の自分勝手な男だよ。・・・こんな俺は嫌いか?」


僕は慌てて首を横に振った。浩樹がどんなに酷い男だったとしても、この気持ちは変わらない。


「だったら迷う必要はないだろ?俺はもしかしたら晶子や、オヤジたちともめるかもしれない。だけどそれは全て俺の問題だ。
優樹が気に病む必要はないし、巻き込まれないように絶対守るから。
だから日本へ帰ろう?二人だけで生きていこう?」


強く肩をつかまれた。揺らぎない瞳。
僕は浩樹のこんな強さが好きなのかもしれない。
ちゃんと自分の意志を貫いて、逞しく生きているから。
自分にはないその強さに、惹かれているのだ、きっと。


今まで浩樹から離れなくてはいけないという確固たる信念が揺らいだとき、その崩壊は一挙に押し寄せた。
自分から望むことは苦手なくせに、流されてしまうことは簡単にできてしまう。
答えは言葉でなく、行動で示した。
10センチほど先にあった、浩樹の唇に、僕はそっとキスを落とした。
一瞬触れて、離れたあと、再び浩樹の方から噛み付かれるようなキスが襲いかかってきた。
唇を割り、歯列をなぞり、激しく咥内を吸う。


「んっ・・・んんっ。」


浩樹の激しさについていけずに息が上がる。
深く深く口付けをしながら、浩樹の手がパジャマのボタンを外し、中へを入り込んできた。


「ちょっ・・・ひろ、ダメ・・・ここ、病院!」


「ダメはなし。待てねぇよ。」


「ダメだって!・・・あっ!」


侵入した指が僕の胸の飾りを引っかいた。中指の先だけで胸の先端に軽く触れ、妖艶な動きでこね回す。


「はっ・・・ん・・・ん・・・ダメだよ。芳美さんそろそろ戻ってくるって。」


「大丈夫だよ。退院手続きずいぶんかかるみたいだから、あと20分は帰ってこない。これでもダメっていうつもり?」


浩樹は僕の下半身を布越しにやんわりと握った。それはもう恥ずかしいくらいに完璧に立ち上がっていた。


「どうせもうこのままじゃ収まらないだろ?だったら俺が抜いてあげるからさ。」


布の上からそこにキスをされた。それだけでたまらない。


「あ・・ん・・・やっ・・・。」


そしてパジャマのズボンと下着を一斉にひざ下まで下ろすと僕の中心は完全にあらわになった。
こんなところ誰かに見られたら恥ずかしくて生きていけない。


「嫌だと思うなら余計なこと考えずに早くイっちゃいなよ。そしたら芳美さんが戻ってくる前に終わるよ。」


ソコはこれから与えられる刺激に期待して震え、先からじんわりと蜜を溢れせさせている。
もうこうなると体は言うことを聞かない。
あるべき解放を求めて自然と腰を揺らしてしまった。


「相変わらずえっちだね。今日は最後までしてあげられないけど、日本に帰ったらいっぱいシよう?」


浩樹は片方の手で下を揉みながら、僕のそれを口に含んだ。
裏の感じるところを下でなぞられて、全身が震えた。


「はっ・・・う・・・ひろ、もう・・・」


「気持ちイイ?」


「うん、うん、だから・・・ああっ・・・んっ」


「イイよ。いつでもイって。」


浩樹の口の中で動いている下が縦横無尽に僕に絡みつき、さらに強く吸いながら上下にスライドさせている。
あまりの快感で頭がおかしくなりそうだった。
僕は自然と腰を突き出し、昇りつめた。


「あっあっ・・・・いく・・・もっ・・・・ああっっ!!」






今の自分は果たして幸せなのだろうか?快感の波に飲まれながらも、どことない後ろめたさが心に引っかかっていた。







流されるままに生きることの楽さに、気づかないフリをしていたかったんだ。











         







2006/7/5












SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送