17.変貌

朦朧とした意識の中最奥を突かれ、揺さぶられていた。
視界がぼやけてはっきりと認識できない。
ただただあてがわれた所の熱さだけを感じる。
突き上げられるごとに周りの景色がゆらゆらと動いていた。

最高に気持ちがよかった。
そして下腹部を突かれる衝撃が胃を圧迫し、最高に気持ちが悪かった。
それでも律動を感じる度に自分が求められている存在だって感じることができた。
ひどく
安堵していた。


常識的に考えれば僕らの関係は始めから狂っていたのかもしれない。
行きずりに体を交え、お互いの感情に背を向けるようにして抱き合った。
ある意味利害の一致した関係。
そして、不安定な関係。

この関係が簡単にも崩れてしまうなんて想像もしていなかった。
お互いの前では狂おしい情熱を隠し、あたかも求め合っているような演技をしていたから。

最初に壊れたのは僕だったのかもしれない。
セックスしか受け付けない体。どこかで悲鳴をあげる心。

しかし、ナオキさんまでもが壊れているなんて、気付かなかったんだ。

彼を壊したのは、



・・・・僕ですか?






ナオキさんが僕の中で動きを速める。
そろそろ終わりが近いようだった。
僕も一緒にのぼりつめたくて、受け入れていた場所を収縮させた。

朦朧とした意識。
周りが霧に包まれているような感覚。
僕を抱いているのは・・・だれ?










うそ・・・・。




これは幻だって分かってる。
壊れた僕が生み出した幻想。

けれどあまりにも生々しい感覚。


(隆平・・・さん)





「りゅ・・・うへいさ・・・ん。」










僕はこの部屋でしてはならない禁忌を犯した。


『している最中はお互いのことだけを想え』


だって、僕を今抱いているのは隆平さんでしょ?


ふいに、イキそうになっていた体が止まった。
その瞬間今までぼやけていた視界が晴れた。

そうだ、僕を抱いていたのはナオキさんじゃないか。

けれどもすでに遅かった。
ナオキさんの優しい目は、獣のような双眸に変わっていた。

「りゅうへい・・・って誰のことだ?」

「ごめ・・・」

僕が謝ろうとする前に頬を殴られた。

「ふざけんなよ。ずっとそいつと俺を重ねて俺とやってたっていうのかよ。」

「ちがう。僕はナオキさんが・・・」

そう言って自分でも言葉につまった。
なぜなら出逢った時、ナオキさんが隆平さんに似てると思ったのも事実。
けれどもナオキさんのことを身代わりにしていたわけじゃない。
ナオキさんはいつしか僕を受け止めてくれる、大切な存在になっていたのだ。
それなのに僕はしてはいけないことをしてしまった。
これじゃ弁解なんてできない。

「そういう子にはさ、やっぱりお仕置きが必要だよな。」

ナオキさんは急に立ち上がるとネクタイを数本持っていた。
僕はただただ怖くて動けずにいた。
お仕置きって何?
ナオキさんが違う人みたいだ。
ネクタイは僕とベッドをくくりつけるために使われた。
かたく結ばれて僕の力ではびくともしなかった。

「やだっ、やめてよ。ナオキさん。お願いだから・・・」

「なんだよ。この淫乱が。縛られて結構感じてるんじゃないの?」

僕の中心はさっきまでそそり立っていたのに、恐怖からすっかり萎えてしまっていた。

「なんだよ。俺とじゃ感じないのかよ。やっぱりそのりゅうへいってやつじゃないとだめなのかな。」

ナオキさんが何をいっているかわからなかった。

「それじゃ、これを使おうか。」

そう言ってサイドテーブルの引き出しの中から薬を取り出した。

「スゴく気持ちよくなれる薬だから。」

そう言ってさっきまでナオキさんを受け入れていた部分にその薬を塗りこんだ。

「つめた・・・」

「冷たい?大丈夫、すぐに熱くなるから。」

そうしていつものナオキさんらしくない、乱暴な愛撫を開始した。

無理矢理薬を塗られた所に指を3本ほど入れられ、かきむしるように擦られる。
ぜったいに痛いはずだった。
しかしなぜか痛みではなく激しい快感が襲ってきた。

「やだぁ・・・はぁ・・・何?変なのぉ・・・」

僕は何かに取り付かれたように腰を振っていた。

「よくなってきた?やっぱり淳は淫らだ。こうやっていじめてあげないと物足りないだろう?」

心では常軌を逸したナオキさんの行動に恐れを感じ、逃げ出したい気持ちで一杯だった。
でも体はもっと刺激が欲しくて言うことをきかない。
まるで拷問のような快楽。

早くイキたくて無理にでも腰を振ろうとした。
瞬間、腹部に激痛が走った。

「勝手に一人でイクんじゃねえよ。」

ナオキさんに殴られていたのだ。
激しい吐き気とめまい、それに快感が僕の体を支配していた。



それからおそらく一晩中、それは続いた。
薬で敏感になった体を持て余し、しかし決してイクことは許されなかった。
そして僕がイこうとすると加えられる暴力。
やがて僕が解放されたのは、意識を失ってからだった。



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