貴方を嫌いになる方法・3


今日が午後登校で本当にヨカッタ。と、僕は心の底から思った。
昨日の晩ベッドでリクエストにお応えしましょう♪とのたまった隆之はとうぜんエッチを仕掛けてきたわけで。
言い出したからにはどういう風にされたいかイチイチ聞いてきて参った。
いつもは流されるままにヤられてしまっているわけだが、自分で何かを要求するなんてマネ恥ずかしくてできない。
それでもギリギリの所まで焦らしておいて最後は僕の口からどうして欲しいか言わないと終わらせることのできない昨晩のエッチは、拷問に近かった。
今思い返すだけでも恥ずかしい。昨日の夜自分が何を言ったか考えるだけでも死にたいくらい恥ずかしい。
穴を掘って入りたい人の気持ちがわかる。むしろその穴に入って土をかぶせて欲しいくらいだ。

目が覚めると案の定全身がダルく、朝からシャキシャキ動く気にもなれない。
そんなわけでもう10時近くになるのだが、いまだ素っ裸のままで隆之の胸にうずくまっている。
ひょろっこくてもやしのような僕とは違い、隆之はギリシャ彫刻のように均整のとれた体つきをしている。
当然胸板は・・・厚い。こういう胸板を見て男としての嫉妬を感じるばかりか、たくましいなぁなんてため息をついてしまう僕ってばもう完全にコッチの世界に感化されてしまっているに違いない。
それが隆之のせいなのか、もとからそういう気があるのか・・・。
高校の頃は女の子をかわいいと思うこともあった。
実際に1人の子と付き合ってみたけど1ヶ月ほどで別れてしまったため、そういうことには至らなかった。
果たして女の子相手に使い物になるのかどうか自分でもわからない。
多分大丈夫だろうとは思うのだが、いかんせんたくましい恋人に抱かれる喜びを知ってしまった今、確かめようかないのだ。
隆之が女と浮気しまくっているのだから自分もすればいいと思ったりするが、ハッキリ言って僕はあんまり女にモテない。
理由、軟弱だから。哀しいけれど。
おかげで大学のモテない友達からは、同盟の一員として認められちゃったりする。
もちろん恋人の存在なんか言えやしない。だって僕の恋人はここにいる色男ですよ・・・なんてね。いや、笑えないって。
自分でもヤバいな、と思う。今こうして隆之の胸に抱かれていることが僕の一番の幸せだったりするわけで。
今の僕には人生山あり谷ありなんて言葉はどっかにすっ飛んでいってしまている。
昨晩あれだけ動いたせいか、隆之はまだ深い夢の中だ。
その、女を落としまくっている美貌の輪郭に僕は手を伸ばした。
ほっぺをつねるとくすぐったそうに鼻をピクピクさせている。
すると半分覚醒したのか、目はつむったままで寝返りを打った。
隆之の体がこっちのほうに寄ってきて、僕の身体をぎゅっと抱きしめた。
満たされているなぁ、と思う。いろいろと不安がないわけではないが、抱きしめられるだけでとろけてしまう。
こういうのも悪くないと最近思うようになった。







現在午後の3時。結局学校を休むハメになってしまった。
理由、性欲大魔人が目覚めてしまったため。哀しいけれど。
あのあと顔をつねったりして遊んでいたら、隆之のことを起こしてしまって、それと同時に彼の息子も起きてしまったのである。
結局それから2回。またお風呂に入って1回いたしてしまった。
僕はもうげんなりしてしまって学校に行くのを諦めた。


「樹さぁ、何とも思わないワケ?」


ベッドに寝そべってワイドショーを見ていた隆之が急に聞いてきた。
僕はといえばもう隆之の中に眠る性欲を目覚めさせまいと離れた場所にあるソファに座っていた。
で、この問いかけである。


「何のこと・・・?」


「昨日のこと。」


今更何を蒸し返すつもりか!もうとっくにコイツの中では過ぎたことと思っていたのに。


「いつものことじゃん。」


「じゃあいつも平気なのか?俺が他の女と寝ても。」


平気なワケない。でも僕は隆之がどれだけ女好きか知ってたし、そりゃあ付き合い始めの頃は戸惑ったりしたけど、それについて取り正すのもなんか嫉妬に狂った女みたいで無粋だと思っていたし、何より慣れてしまった。


「別に・・平気じゃないけど。今日だって少し怒ってやろうって思ったのに急にフツーに接してきて怒るタイミング逃しちゃったんだよ。」


「樹は何で怒るの?」


「そりゃ、怒るだろフツー。浮気されたら。」


この男は今更何を言い出すのかと思った。


「浮気・・・浮気ね。俺たち付き合ってんのかな?」


なんか話の雲行きが怪しくなってきたような気がする。今までなるべく考えないようにしてきた疑問が突きつけられようとしているのだ。今、まさに。


「・・・まさか僕たち付き合ってないとか言っちゃったりする?あれだけヤって。」


「いや、そうとは言わないけど。ヤるだけのお友達かもしれないじゃん。」


「隆之は僕のことセフレだと思ってるの?」


「そうは思わないけど。ハッキリ告ったりしてねーなと思って。でも樹は俺のこと彼氏だと思ってくれてんだ。」


「隆之は違うのかよ?」


「俺?んー、まぁそれでもいいよ。」


・・・なんか。この男と僕って価値観ズレてる?
一応ベッドの上では好きだとか愛してるとかしっかり言ってくれているので、僕は隆之とつきあっているのかと思っていた。でもそれも僕の勘違い?


「なんか納得いかない。」


「わかったわかった、俺は樹ちゃんのことが大好きで、樹ちゃんも俺のこと好きだから2人は恋人どうしなわけなのだね。それでいい?」


「それでいいって!何だよ、その取ってつけたような言い方・・・!」


「それよりさぁ、今日の夕飯何作ってくれんの?俺今日お好み焼き食べたいなぁ。」


「お好み焼き?じゃあキャベツ買ってこなくちゃな・・・・ってオイ!話を変えるな。」


「オイ、話を変えるな樹。キャベツがないなら買ってきて♪」


「・・・もういい。」


何かコイツに何を言っても無駄な気がした。
一気に戦意を失った僕は立ち上がってサイフを手にすると、スーパーにキャベツを買いに行くべくドアへと向かった。
そんな僕を、やけに真剣な目で隆之が見つめていたことなんて知るよしもない。
背中を向けていたし、頭の中ではどこの店が安いかでいっぱいで。
けれど隆之はこの時何か考えていたらしい。
そしてそれは僕たちの関係の分岐点になっていったのだった。




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