貴方を嫌いになる方法・4


その日、授業が休講になってしまってもう帰ろうとした僕は、校門の前にイヤーな影を見つけた。
僕の記憶が違っていなければ、おそらく2週間ほど前に隆之の部屋でハチ合わせしたバカそうな女子に違いない。
なるべくか関わりたくないとばかりに、避けるようにして通ろうとしたその時、肩をたたかれた。
誰でもない、その関わりたくない相手にだ。


「ちょっと。」


「何?隆之なら授業中なんじゃない?」


「いーのいーの。今日はあなたに用があんの。」


何だろう?僕、修羅場は嫌だなぁ。こんな校門のまん前で。なんてのん気なことを考えていると、強引にも拉致られてしまった。
気がつくと学校近くの公園にいたりする。


「どういう用ですか?」


「何て名前なの?」


なんか会話がかみ合わない。コレは隆之と同じ人種だ。話を聞かない症候群。


「中谷です。」


「中谷・・・何?」


「樹。」


「樹君ね。わかった。私はアユミ。歩くってかいてアユミね。まぁそんなことはどーでもいいんだけど、樹君、単刀直入に聞くと隆之とはどーいう関係なの?」


息が止まりそうだ。何てことをさらりと聞くんだ、このアユミっていう女は。
さて、僕の心臓はバクバクである。マスターベーションしている所を急に入ってきた母親に見られた哀れな中学生のような気分になる。(実際僕はそんな失態を犯したことはないが・・・。)
でもここでハッキリと恋人宣言をする勇気ははっきり言ってない。
男と付き合ってることを隠したいという以上に何だかこの女を敵に回したくなかった。
だって僕小心者なのだ。コンビニに入るとき入り口付近でたむろしてる不良を避けて通るような小心者具合なのだ。


「とっ友達に・・・決まってるでしょう?それ以外の何に見えるっていうんです?」


「本当?なんかドモってるけど。」


「当たり前です。」


自分でも思う。なんかこんなに焦っててメチャクチャあやしくないか?こういうの隠すの苦手なんだよぉ。


「ふーん。そうなんだ。じゃあいいや。ごめんねぇ時間取らせて。」


「えっ?もういいの?」


あれだけ強引に尋問しておいてもういいのかよ!正直言って拍子抜けだ。


「うん。いいの。悪いね、突然変なこと言っちゃって。」


「いいけど・・・。なんでそんなこと聞くの?」





「隆之のこと結構本気になっちゃったんだよね。それでちょっと・・・ライバルが気になって。」


隆之に本気で熱を上げる女は結構いたので対して驚かなかった。しかし僕をライバル視する理由がわからない。


「なんで僕がライバルなワケ?あの日家にいたから?」


「ん、まーそうなんだけど。この前見ちゃったんだよね。」


何を見られたのだというのだ?確かに隆之は外でも僕に友達としては過剰なスキンシップをとってくることがある。
それは、あやしいかあやしくないかのスレスレの所だったが。
それを見られたのだろうか?


「何を・・・見たの?」


自分の顔が引きつっているのがわかった。どんな決定的な瞬間を見られてしまったのだろう。
しかしアユミの回答を聞いたことにより、僕の顔はさらに引きつった。





「隆之がホテルに男の肩を抱いて入っていくところ。相手の男がハッキリ見えなかったから樹君なのかと思って。」





フリーズ。
僕、隆之とホテルなんて行ってない。


「隆之本当は男が好きなのかな?と思って。なんか私とエッチした時つまんなそうだったし・・・。で、それを確かめたかったわけ。樹君は知らない?隆之のソッチ方面の話とか。」


アユミの話が右の耳から入って左の耳から抜けていく。
僕は始めての男の浮気相手の出現にひどく戸惑っていた。
男は・・・僕だけだったのに。
何でだろう?この胸が締め付けられるような気持ちは・・・?
隆之が僕みたいな男を抱くのが不思議だった。女には不自由しないのに。
だから僕を抱くのは僕が特別なんだって、どこかで自惚れてた。
それなのに、他の男とホテル?
ホテルでナニしてんだよぉ〜。
僕の身体に飽きたのか、それとも僕で男に味をしめたのか。


「知らないんならいいや。深く考えなくて。そうか、ショックだよね。友達がホモだったなんて。ゴメン。今の聞かなかったことにして。」


アユミの話が頭に入らない。聞きたかったことにしたけりゃしたいさ。
でも一度聞いたからには僕の頭の中はすでに捕らわれていて。
どうすりゃいいんだ?浮気を責めるとか?
でも今まではそんなことしたことなかったのにいきなり責めたら変に思われるだろうか??


いや、この前僕と隆之は曲りなりも恋人だってことを確かめたばかりじゃないか。
だったら問い詰めても文句は言われないだろう。

あの絶倫男・・・一回シメちゃる。
アユミが隆之の話を延々としている中、僕は怒りの炎で打ち震えていた。




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