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はじめから わかっていたんだ

おれたちは いけないことを してしまったと







母親のいなくなったリビングルームは、しんと静まり返った。

「これが・・・答えですか?」

震える声で父親に問う。

「そういうことだ。さや子は君達の関係を受け入れることはできない。今は多少混乱しているからかもしれないが・・・。」

「親父、それは要と啓太君に別れろってことなのか?」

いたたまれずに貢が口を挟んだ。
貢としても複雑な心境だ。
それだけ二人の姿はいろんな意味で衝撃的だった。

父親はそれに対して何も答えなかった。
当たり前の反応なのだ。これが。
俺たちは・・・覚悟はしていたから。








その夜、俺は病室に戻っていた。
あの後の記憶はあまりない。

朱音に罵られたこと、父親は無言だったこと、貢が送ってくれたこと。

それくらいしか覚えていなかった。
気がついたらこうして病院にいて、パイプイスに腰掛けた啓太が俺の手を握り締めていた。

「わかって、いたんだ。俺たちの関係は認められないってことは。だけど何でか結構ショックだった。・・・いや、違うな?何か違和感があるんだ。・・・ごめん。わからない。」

「要にとっては、つらい一日だったな。ごめんな。」

俺は首を振った。

「ううん。俺の気持ちはもう決まっているから。親がどうであろうと、関係ないから。」

啓太が一瞬何かに気付いたような顔をした。
しかしその顔はすぐに優しそうな笑顔にすり返られた。

「前に、二人で遠い所に行こうって言ったの覚えてる?」

「ああ。なんかドラマみたいな話だよな。」

「あれ、本気で考えてもいいのか?」

啓太の顔は真剣だった。けれど俺の心ははなから決まっていたし、迷うことはなかった。

「当たり前だ・・・けど・・・。」

「大学時代の友達が、大阪で会社を始めるらしくて、一緒にやらないかって。前から言われていたことなんだけど。もし本当に東京を離れる機会があったら考えてくれって。」

「本当に?」

「ああ・・・もちろん要が嫌なら無理にとは言わないけど。一緒に行かないか?」

夢みたいな話だった。
これでやっと啓太と二人の生活が送れる。
そう思って嬉しいはずなのに、気持ちは複雑だった。
何かひっかかるような気がしながらも、俺は即答した。

「行くよ。お前と。」

ずっと啓太と二人で生きていきたい。

この気持ちだけはまぎれもない事実。
こんなに欲しいと思うものは他にないから。

「要の人生を、俺に預けてよ。」

「やるよ。もう・・・離れたくない。」



久しぶりのキス。

ここは病院なんだけど、そんなこと俺たちに関係なかった。

啓太はパイプイスから立ち上がり、俺の布団の中に潜り込んでくる。

病院のベッドの上で、俺と啓太は重なり合った。
お互いの雄の部分が熱く、硬くなっているのを感じる。

「すごい。要」

「お前だって。」

キスの合間に、熱い吐息の漏れそうな声で語りかけられる。

「そう言えば俺たちすげぇ久しぶりじゃない?」

「・・・そう・・・かも。」

体中で啓太を感じることが、こんなに気持ちいいなんて。
まだお互いどこにも意図的には触れていないのに、こうして触れ合っているだけでもヤバい位に感じてしまう。
今日は、自分を抑えられる自信がなかった。

久しぶりの抱擁に、それでも決して先を急ぐわけではなくじっくりと口づけを楽しんでいた。

熱い。

どこもかしこも。体中の熱が行き場を無くして彷徨っている。
俺は出口を求めて、啓太の背中をかき抱いた。

「体、大丈夫?」

「ン・・・大丈夫。」

背中を強く抱いたことで、辛いと思われてしまったのか。啓太が心配そうに聞いてきた。

「いいの?」

「何が?」

「何がって・・・・。ダメだ。もう止まんない。」

啓太は俺のパジャマのボタンを上から3つ分くらい外すと、素肌に手を這わせてきた。
外気に触れた胸が強張る。
しかしそれも束の間のことで、すぐに突起を弄られてぷっくりと熱を持った。

それから、始まる、お互いの体中への愛撫。

いつもより執拗に、丁寧に弱い部分を攻められているような気がする。
俺は声を押し殺すの必死だった。

「・・・くっ・・。」

「声出したいの・・・・ダメだよ。聞こえちゃう。」

「分かってる・・・んなこと。だったらそんな風に・・・ん・・・するな。」

「やめていいの?」

そう言って啓太は俺の下半身の弱いスポットをなぞった。
同時にぴくぴくと反応する。

「ああっ!」

啓太はそうなることを知っていたかのように俺の口元を手で覆った。

「声出しちゃダメだって・・・・。」

「だって・・・。ひゃぁ・・・。」

絶対に啓太は楽しんでいると思った。
声を出しちゃいけないといいながら、俺の声が出てしまうようなところを攻め立てる。
どうしようもなく苦しかった。

今すごく啓太を欲しがっている。

やがてお互い寸前まで登りつめた頃、啓太は挿入を開始した。
久しぶりの感覚に体が少し強張る。

「あ・・・。」

欲しかったものを手に入れた充足感が体中に広がる。
やがて激しくなる律動に身をゆだねながら、快楽におちていく。

こんな場所で、なんて倫理観はどこかに捨ててしまっていた。

啓太が自分の中で熱い飛沫を解き放った時、これからこの人と生きていくんだと思ったら心が熱くなった。

もう、俺は大丈夫だから。

俺の人生をお前にやるよ・・・啓太。







はじめから わかっているんだ

おれたちは いけないことを しようとしているから


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